特に結論などはない。
ただの物語に過ぎない。
時は2017年。
僕は誰もが認める一流ホテルに転職した。
「ここから俺の人生は始まる」
社員証を眺めながらニヤニヤしていたのを覚えている。
ホリエモン・キングコング西野・幻冬舎社長・サイバーエージェント社長・斎藤1人・里中李生さん・その他経営者・成功者の本を大量に買い込んだ。
これで俺も一流の仲間入りを果たしてやる。
「一流の人間はジャンクフードを食べない。」
「レベルの高い人間とだけ付き合え」
僕は同窓会で再会した地元の仲間を切り捨てた。
「こんな平凡なクソとはもうお別れだ。」
僕は無駄な時間を読書に費やした。
「スマホばかりいじってるとオナホみたいな野郎になる。」
僕はファッションを変えた。
僕は引っ越した。
「家賃7万がなんや。もっと稼げばいいだけなんや。」
僕は残業と夜勤を積極的にした。
「稼いで稼いで稼ぎまくる。」
合コン受けは良かった。
「俺はもっと上の人間になるよ、こんなのただの過程だからさ。」
「すごいですう~、私もそのホテル行きたいですう~」
僕は向上心の高い者の集まりに参加した。
「転職9回したよ。そろそろ独立できる。」
「今は派遣だけど、電通でいろいろ勉強できてる」
「そろそろカフェを経営しようかなと思ってる」
「年収1億の人と今度会ってみない?」
確かに、彼らが凄かったとは思えないがそこには熱があった。
しかしうまくはいかなかった。
電車に乗れなくなってしまった。
電車のドアが閉まると吐き気がひどくなりパニックになった。
「なぜだ・・・」
そして、最悪の事態が起きた。
「もう、来れないんだね。あたしは次のステージに行くから。じゃあね」
あっさりコミュニティから切り捨てられたのだ。
地元の友・ビジネスの仲間・健康・夢、いろんなものを失った。
ラインが壊れた。
引き継ぎを失敗した。
ゼロになった。
そして職を失う。
若き日の挫折。